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短い物語 第3話 「仕事という針のむしろ」

-はじめに
 長編はFC2小説で書いていこうと思います。なので、ここでは「短い物語」というものを載せることにしました。他の通常の短編も月に3本載せられればいいなと思っています。

 この「短い物語」は、感嘆符や疑問符などが一切ない超短編小説です。
 ちょっとした息抜きに読んでいただければ幸いです。
 
 それでは、本編は追記からどうぞ。
 全く、あの人は何を考えているのか・・・。
 あの人、もちろんそれは先輩の美奈子のことだった。
 笠原美奈子。某企業のOLで、いわゆるキャリアウーマンというやつだ。
 なんでもかんでも上から目線で、口癖は、そんなこともできないの。だ。
 いつも長い髪を後ろでまとめ、切れ長の目にメガネが加わるから余計にデキるタイプとしての印象が強い。
 実際仕事はテキパキと正確に無駄なくこなしているので、上司からも一目置かれている。
 だが、私は認めない。
 誰がなんと言おうと、美奈子の性格を私は認めない。
 まだこれやってるの、これはもういいから、こっちをやって。
 とか、
 そんなこともできないの、小学生にもできるわよ。
 とか、とにかく人を馬鹿にしてばかりだ。しかし、やはり仕事はできるので文句も言えない。

 そんな苛々とした毎日を送ってもう何ヶ月になるだろうか、街で偶然先輩に会ってしまったのだ。
 あら、奇遇ね。
 そうですね。
 当たり前だけど、心中穏やかなわけがない。
 また嫌味を言われると思うだけで逃げ出したくなる。いっそ今日不満をぶちまけてやろうか。
 そんなことを思いながらも先輩とウィンドウショッピングをしている私はやはり流されやすいタイプなのだろう・・・。
 あら、これなんかあなたに合うんじゃない。
 意外に薦められたネックレスはとてもキレイだった。
 キレイ・・・。
 思わずそんな声が漏れるが、先輩は気にせず他のアクセサリーも吟味し、入るわよ。と言って店に入った。
 慌ててついてったら、先ほどのキレイなネックレスを店員に出してもらっていた。
 ほら、つけてみなさい。
 言われるがままにつけてみると、これがなんともキレイ・・・なんだけど、何か違和感がある。
 やっぱりダメね。
 そう言って先輩はさっさとネックレスを回収してしまった。
 この女、わざと嫌がらせして楽しんでいるんだわ。
 そんな考えが頭を巡り、怒りがふつふつと沸いてくるのを実感していた。
 はい、これ。
 そんな時、こっちの怒りなんて知りもしない呑気な先輩は別のネックレスを差し出してきた。私は着せ替え人形じゃない。思わず言い出しそうになったが、
 いいから、これつけてみなさい。
 そんなことを大真面目に言われるので、拍子抜けして言われるがままにつけてみた。
 うそ・・・・キレイ・・・じゃない。かわいい。
 あなたはキレイというより、かわいい物でちょっと飾ればこんなに素晴らしいのよ。少しは目が覚めたかしら。
 さっきまでの怒りはどこへやら。ネックレスだけで機嫌を直すどころかプロデュースまでされてしまった。それも今度は違和感が全くなかった。
 ありがとう・・・・ございます。
 思わず感謝の言葉が漏れる。だが、先輩は相変わらずだった。
 お礼なんていいわよ。買うならあなたの自腹なんだから。
 一気に現実に引き戻された気がした。

 あの後、特に話題が広がることもなく、そのまま別れたが、先輩である美奈子に対する印象は少し変わったように思える。
 しかし、やはり見下したようなスパルタは健在だった。
 コピー一つとるのにも、そんな簡単な操作で何を迷っているの。といきなり言われた。
 あの、昨日は---。
 今は仕事をしなさい。
 いつもの調子だった。

 書類を運んでいる最中、目的の会議室の手前にあるもう一つの小さな会議室のドアが開いていたので、閉めようと思い、ただそれだけの理由で近づいたら思いがけない会話を聞いた。
 推薦できるような人材はいるかね。
 はい、二名ほど。
 今年は二名か、大分絞ったな。
 ええ、あまり良い人材はいなかったもので。
 今年は不作だったのかな・・・多少厳しくしすぎてはいないか、美奈子くん。
 それは、間違いなく先輩の声だった。課長らしい声が美奈子と呼ぶのだから確定だろう。うちの会社には美奈子なんてそうそういない。
 いつものように、少し煽って急かしてるだけです。それで動揺するだけの人は、引き抜く必要がありませんから。
 相変わらず厳しいな。だからこそ、美奈子くんに任せているんだが。
 引き抜く・・・。どこかへ異動になるのかしら。
 それで、今年は誰なんだね。
 常盤裕子(ときわゆうこ)と日高直美(ひだかなおみ)です。
 日高直美って私・・・だよね。
 自分の名前が一瞬分からなかった。それほどに真っ白だった。
 一体、自分はどこへ引き抜かれるんだろう。

 課へ戻ると、騒然となっていた。
 どうしたの。
 同僚に話を聞くと、なにやら会社の重大プロジェクトがいよいよ動き出すとのこと。
 そんな話もあったな、数ヶ月前に。朝礼で口頭のみだったからあまり記憶にないけど。
 まあ、私みたいな凡人には縁のない話だ。
 早々に自分のデスクに座り、仕事を再開する。書類作成からデータ整理まで山積しているのだ。
 会社に入るまではパソコンに触ったことすらほとんどなく、当時は本当に苦労したものだ。ソフトの扱い以前にタイピングが指一本でキーを選びながら打つという初歩中の初歩レベルだった。それをなんとかブラインドタッチとまではいかないものの、ある程度早く打てるようにまで成長した。
 エクセルやワードなんかもどう操作していいやらさっぱりだったが、今ではそこそこ使えるようになった。今の時代、こういったスキルが必須だ。とよく言われていたが、会社に入ってからそれを身をもって実感した。
 データ整理が終盤に差し掛かった時、美奈子先輩が戻ってきて、課は一瞬静寂に包まれた。
 では、これから重大プロジェクトのメンバーを発表します。
 いつも美奈子は何名とは言わない。大きなプロジェクトでも多くて五名ほどだ。美奈子曰く、プロジェクトは少数精鋭であればあるほど効率がいいそうだ。まあ、場合によっては多くするだろうけど。
 課の多くが作業を中断して、美奈子の発表に耳を傾けていた。
 常盤裕子さん。
 当人は予想もしていなかったのだろう、きゃあ。と短い悲鳴に似た声を上げて立ち上がった。
 周りは、おおー。と拍手していた。
 そんなに嬉しいものかね。
 日高直美さん。
 カチャカチャとタイピングする音だけがしばらく響いていた。
 美奈子が短く溜息をつくと、もう一度声を張って呼んだ。
 日高、直美さん。
 より発音をはっきりさせるためにわざわざ区切って呼んでくれた。
 しかし私の脳内では仕事モードだったために、また嫌味を言われると勘違いし、少し不機嫌に返事をした。
 はい。
 しかし、みんなの見つめる視線や異様な静寂さ、美奈子の視線で全てを理解し、そして混乱した。
 え、私が、プロジェクトに。
 そうよ、私が一任されているプロジェクトの選抜に見事選ばれたというわけ。以上二名です。
 発表が終わると、呼ばれなかった人による残念オーラが充満した。
 ふと、先ほどの会議室のことを思い出した。


 いつものように、少し煽って急かしてるだけです。それで動揺するだけの人は、引き抜く必要がありませんから。
 相変わらず厳しいな。だからこそ、美奈子くんに任せているんだが。
 それで、今年は誰なんだね。
 常盤裕子(ときわゆうこ)と日高直美(ひだかなおみ)です。


 先ほどの常盤裕子の時点で気付いててもおかしくはなかったが、見事プロジェクトに引き抜かれたのだった。
 ちょっとこっちに来なさい。
 美奈子のところへ行くと、箱を渡された。宝石でも入ってそうな箱だ。
 開けてみて。
 美奈子先輩が私に贈り物を。まさか爆弾じゃ・・・。
 これ・・・・って。
 開けたらそこには時限式の発火装置・・・・なんかあるわけなく、そこにあったのは---。
 これ、自腹で買えって言ってたネックレス・・・。
 昨日偶然先輩に会った時に選んでもらったネックレスだった。しかしお値段が月給の三ヶ月分はあったのでパスしたのだ。
 プロジェクトに選ばれたお祝いよ。欲しかったんでしょ。
 あの後、別れたはずの美奈子はこれを買いに戻ってきたのだと、後で店員に聞いた。それもプレゼントとして。
 これからは、このネックレスをつけてがんばってね。私の扱きに耐えてここまで成長してくれたんだから、期待してるわよ。


 周りからは仕事というと愚痴ばかり聞く。
 努力しても嫌味を言われるだけで、ちっとも報われないという話が一番多い。
 私もその一人だった。どれだけ努力しても嫌味ばかり。しかも嫌味を言う人が仕事ができるのだから、余計に文句も言えない。
 ただ、認めてもらえた瞬間の嬉しさは、今での苦労が報われた気がして、よりがんばれそうな気がした。
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